10/1(土) 「響け!情熱のムリダンガム」公開! 小尾淳さんを迎えてトークショーを行いました
わなっかん!
『響け! 情熱のムリダンガム』ついに公開となりました!
10/1(土)シアターイメージフォーラム、シアター2にて、初日13:05初回上映後に、この映画のタミル語監修で多大なご協力をいただいた、小尾淳さんと、配給の稲垣紀子(なんどりマダム)とのトークショーが行われました。おかげさまで初日初回は満席となりました!ありがとうございました。
小尾さんは「響け!情熱のムリダンガム」(注:海外輸入版DVDの時)が、初タミル語監修だそうで、今回、客席で鑑賞しながらなんどりマダムとのご縁や留学時のことなどいろいろ思い出されたそうです。そしてパンフレットに寄稿したように監督の音楽愛にあふれた作品だと。
小尾さんは大学卒業後にインド舞踊家を志し、当時の先生の紹介で何度か渡印して学ばれた後、音楽転向し2004年~2007年にはタミル・ナードゥ州ティルヴァイヤールにある州立音楽カレッジに留学されています。
ティルヴァイヤールはカルナータカ音楽の聖地ではあるがとても田舎なのだそうです。
南インド古典音楽を習う方法
1. 徒弟制度
2. タミル州立音楽学校に通う
大きく分けてこの2つの方法があるそう。
本作中で、ピーターが、ヴェンブアイヤル師匠の門戸を叩いたときに、兄弟子となるマニに「習いたければ公立学校に優先枠があるだろう、教員になれば給料も良いぞ」ということを侮辱気味に言われれるシーンがあります。
ここでいう優先枠とは、本来は留保枠という専門用語でインドでは社会的弱者(特に指定カーストやその他後進階級)が優先的に大学に入れる枠があるとのこと。
小尾さんによると、音楽家の世界はとてもシビアで、トップになれるのはほんの一握り。有名な音楽家でも他の職業を兼任していることもあるほど、音楽で生計を立てて行くことは難しい。だからマニが揶揄したように音楽カレッジの教員にしても博士号を持ってはいるが演奏家としては2流と言わざるを得ないと。
そのような状況なので音楽学校に行って音楽家になろうという人はあまりいなくて、主に学位取得のために入学するということでした。
小尾さんが入学したカレッジは声楽、ヴィーナ専攻の女子だけの学科と、タミルの儀礼音楽に欠かせないナーダスワラム(ダブルリードの気鳴楽器)、タヴィル(両面太鼓)専門の男子だけの学科の2つがあったそうです。(これらについては「響け!情熱のムリダンガム」のパンフレットに他の楽器とともに詳しく書かれていますので、是非読んでみてください)
カレッジにはバラモンの姉妹、クリスチャンのシスター、村から出てきた子など様々な出自の学生がいたそう。
小尾さん自身、そういった出自にはあまり気にせず接していたそうですが、ある日、政府から楽器の贈呈式があり、指定カーストその他後進諸階級の子達が受け取って写真を撮られている所を観て、階級の差というのは、このようにいつでも確認させられるのだと驚いたそうです。
そして小尾さんも入学手続きの際に個人情報記入欄にカースト名を記入するように言われ戸惑ったそうです。周りからは、日本にカーストがないのをとても不思議がられたとのこと。
アウトカーストの人は、今は音楽家になれたのか?
同級生たちは卒業後に今どうしているのだろうとfacebookで時々確認すると、ムンバイ出身のバラモン姉妹はシンガポール、マレーシアで音楽教員として活躍しているとのこと。しかし他の誰も演奏家としてやっている人は一人としていないそうです。多くは卒業後に嫁ぎ、大学院まで進んだ子も今は専業主婦になっているとか。
小尾さんは2020年に著書『近現代南インドのバラモンと賛歌』を出版。(芸能と社会という)研究テーマに関心をもったきっかけを振り返りました。なぜインドでは昔ながらの音楽が脈々と受け継がれ、路上で賛歌を歌いねり歩いたり、音楽コンテストで若者が腕を競いあっているのか。日本と全く異なる音楽状況をうらやましく思いその理由を明らかにしたいと考えたそうです。
最後にヴェンブアイヤルが、「カルナータカ音楽は井戸ではない。河だ。井戸にとどまっているのではなく常に流れている」というセリフがあり、古典音楽コンサートも昔ながらのことをただ踏襲するのではなく、どんどん革新的になってきていると言います。そうした姿勢が現代でも古典音楽が生き残っていける秘訣なのではないかと締めくくりました。
小尾さんの著書『近現代南インドのバラモンと賛歌』
当面のシアター・イメージフォーラムの上映スケジュール
13:05〜15:22/15:35〜17:52/18:45〜21:00
土日祝には、トークなどイベントを毎日予定しています。
(平日もいくつかイベントを画策中です〜)
ぜひ皆さま、劇場に観に来てください!!!
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!
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