インド映画【囚人ディリ】、11/19(金)より全国公開!
わなっかん!
なんどりでもチラシを配布中(まだ若干あります!)の、カールティ主演のタミル映画【囚人ディリ】(Kaithi)が、今週末からいよいよ公開!
今年は、ラジニカーントの【ダルバール】に続いて、南インド・タミル映画が2本も日本で一般劇場公開。
何かと閉塞感を感じるコロナ情勢下で嬉しいニュースです。
配給会社様よりチラシいただきました。ありがとうございます。「囚人ディリ」11/19から公開です。みんな見に行こう! pic.twitter.com/Rg6BxXkDSF
— 南インド料理なんどり (@nandri_tokyo) October 9, 2021
公式サイト
実はですね、私は、2019年10月の現地公開時(10月28日:公開4日目の日曜日)に、シンガポールで観てきたんですよ。(シンガポールはタミル系の人々がたくさん居住し、タミル語も公用語の一つで、インドとほぼ同時期にインド映画も公開されています。)
ここまで早い時期に、この映画を観た(酔狂な)日本人は、数えるほどだろうと思います。
先見の明があったぜ、えっへん、なーんて、ちょっと得意げですw
どうして観たのか?
ヴィジャイの【Bigil】(ビギル 勝利のホイッスル)を集中して観まくろうと、現地1泊2日間滞在の弾丸スケジュールでシンガポール行きまして。(2日で4回ビギルを観ました。)
同時公開されたカールティの新作の監督が、ヴィジャイの次回作の監督に決定と聞いていたので、そりゃ一緒に観とかなきゃ♪と他にも観たい映画の候補にしていたのでした。
でも、シンガポール入りする前日まで、この【Kaithi】の上映スケジュールをWEB上でほとんど見かけず。
要は、【Bigil】がタミル映画をかけるような劇場のスクリーンを公開数日は完全独占状態で、他のタミル映画がかかる余地がほとんど無かったのです。
でも、シンガポールは急遽上映が決まったり、直前でスケジュールが出るのもしょっちゅうなことを経験上知っていたので、【Bigil】を観にいくついでに【Kaithi】のタイムテーブルが現れるのをチェックし続けました。すると現地入りした土曜の午後(夕方?)頃、リトルインディア脇のシネマコンプレックス(シネコン)で翌日日曜朝10時台の回がスケジュールに出ました!(前日の午後に出るなんて、日本ではなかなかないですよね?)
10月28日は午前中に【Kaithi】を観て(なんと前日の発売で日曜朝の回が300人位のキャパで満員でした!)、その後夜、帰りの飛行機に乗るまでに【Bigil】を2回観ました。満腹w
#Bigil と同日公開の、カールティの新作Kaithi も何とか観ました。悪い人ばっかり次々出てきてバイオレンス全開だったけど(普段そういうの苦手な私でも)超面白かった!この監督が次のヴィジャイの映画を監督するので、俄然楽しみになりました~
— Noriko Inagaki(むんむん) (@munmun_t) October 27, 2019
(帰国直後のツイートより)
Kaithiは踊らないけどマサラ映画だザ・タミルだ!という感じの男気映画で、ヴィジャイがこの監督のどこを気に入ったのかな、とか考えるとまたさらに楽しみです☆手錠ついたままカールティのドーティアクションかっけー。刃物ささって瀕死でも娘のために立ち上がるカールティかっけー。ビリヤニ一緒に食べてー。(かなりKaithiで惚れた)
帰国後、数日して日本でも自主上映が告知されました。
応援のために慌ててアップした当時のブログです↓
Spaceboxさんで来週11/9に上映される、ということで、先日シンガポールで観てきたカールティ主演のアクション映画 #Kaithi のことをざざっと書きました。ネタバレはしてないと思います。よかったらご参考にどうぞ。 #インド映画
Kaithi https://t.co/yPbjjiD9wR— Noriko Inagaki(むんむん) (@munmun_t) November 1, 2019
↑今となっては、あらすじなど思い違いなどもあるんですが、現地で英語字幕で1回観ただけで、よくここまで書いた!(それだけ、カールティ映画初体験だったのに夢中になって記憶していて、応援したい気持ちがあった、映画だったと思うのです)というところで、敢えてその当時の勢いを保存しておきたくてそのままにしています。
たった1回を英語字幕で2年前に観て以来なので、実は今日のところは筋についてなどあまり覚えていません。
でも逆に、11月19日は、新鮮な気持ちで観に行けるのでとてもとても楽しみです。
ところで、この【囚人ディリ】(Kaithi)が「踊らない映画」としてプッシュされているようです。
「ボリウッド」と呼ばれてきたインド映画。歌って踊るにぎやかなイメージが強いですが、19日に日本で公開されるアクション映画「囚人ディリ」のように、最近は「踊らない映画」がヒットする例が出てきているそう。川上記者@kawakamit4がインド映画の今を探りました。https://t.co/P6bDT4EVJt
— 毎日新聞国際ニュース (@Mai_Intl) November 16, 2021
【ムトゥ踊るマハラジャ】(1998年日本公開)以前は、【大地のうた】をはじめとするサタジット・レイ監督の映画=すなわち「踊らない」インド映画が日本人の考える「インド映画」でしたよね。
「踊らない」インド映画が「新種」のように語られることが、そもそもヘンな話だと思うんですが!
この【囚人ディリ】の特徴は、「踊らない」けど「コテコテなマサラムービー」ってことじゃないかと私は思うんです!
「踊らない」し「暗い」、アート系/オフビート系なインド映画っていうのは昔から、いくらでもあるんですけど。インド映画のメインストリームではない、というだけで。
(今月初めに東京フィルメックスで上映されたタミル映画【小石】なんかは正にそれで、でもすごかったですね、あれは傑作だ、アカデミー外国語映画賞インドから代表作品に選出されるのも分かる気がするわー)
もう一度言います。
この【囚人ディリ】は、「踊らない」で「メインストリーム」を行く「コテコテなマサラムービー」で、「これぞタミルだー」なインド映画です。
きっと、絶叫上映、応援上映、マサラ上映などにめちゃくちゃ向いてます。
日本語のレビューや情報などがない当時に私がKaithiを観て、「踊らない」ことにどんな印象を受けたのか。
(踊らないらしい、女性が出ないらしい、というのは事前に漠然と知っていました。)
「踊らない」と言われると「踊らないなんてつまらない」というよりは「踊らないと生真面目で救いのない映画とか多いから、そうだと嫌だな」という不安がありました。
私の場合は、救いのない映画が苦手で、例えばヴィジャイ映画なら基本的にハッピーエンドになると知っているから安心して観に行けるんです。そしてヴィジャイはダンスで本編以上にエモーションなどを表現したりするから、映画とダンスは絶対切り離せないんですよ。
ダンスがないとしても、音楽シーンでエピソードやエモーションを上手に表現したインド映画はたくさんあります。前述のサタジット・レイ監督作品も、踊ってないとしても音楽を上手に使っている作品が多いです。
先日東京フィルメックスでリマスター上映されたマラヤーラム映画の巨匠アラヴィンダン監督の【魔法使いのおじいさん】も歌が印象的ですよね。
だから、Kaithiを観るのは楽しみだけど、不安もあったのです。その日もビギルを2回は観るつもりマンマンだったので、Kaithiをスキップして体力温存しようか、とちょっと弱気にもなったのです。
でも炎天下の中、シネコンのスクリーンにたどり着いてみれば、朝10時台の回だというのに、タミル系のお客さんでぎっしり。
インド映画って、朝や昼の回ってガラガラ、やっぱり盛り上がるのは夜、というイメージがあったのですが、もうここで気分アガリます。
冒頭、カールティが出てくるまで、焦らされまくるんです。
満を持してのカールティ登場。「待ってましたあー!!!!!」場内雄叫び・大歓声のスゴいこと。
ここ、シネコンだよ?(現地でもシネコンではインド映画であっても行儀のいいお客さんが多い)
その後はハラハラドキドキのジェットコースター状態。
不安を煽る音楽など、音楽の効果はすごく、泥臭くコテコテな人物が後から後から後から出てくる人海戦術。
銃をぶっ放すシーンでは、「ハッピーディワーリー!」と叫ぶファンだとかもいて、やんややんやお祭り状態。
終わってみれば、ダンスがないとかいうのはそう言えばやっぱり無かったね、という感じ。踊らない不安はどこ行った?
もう「踊らない」映画であろうと、ブラックテイストのようでいても、「血湧き肉躍る」マサラムービーだと実感。
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インド映画はなぜ踊るか?
諸説あるようですけど、私は現在のところ、周防正行監督が約20年前にインド映画はなぜ踊るかをテーマにインドを探訪した際に書いた【インド待ち】の中で、自身の映画【Shall we ダンス?】に絡めて考察していることが一番腑に落ちてます。
また、【神さまがくれた娘】が大阪アジアン映画祭上映時に来日したヴィクラムにQ&Aで質問した際にこう答えていました。それも一つの指針になっています。
「インド映画やタミル映画の特徴は、「エモーション(感情)」だと思う。 インド人にとって、音楽は切っても切り離せないものであり、ミュージカルシーンはエモーションを表現するもの。 ダンスシーンがない/少ないインド映画は増えているし、自分たちも無理にダンスシーンを入れようと思わないが、踊る踊らないに関わらず、ミュージカルシーンそのものはこれからもインド映画に残っていくと思う。」
( ※【囚人ディリ】は、ラジニカーント主演作以外でのタミル映画の公開としては、ヴィクラムの【神さまがくれた娘】(2014年日本公開)以来です。)
Kaithiは踊っていなくても踊っているのと同様にタミルのエモーションが溢れとるよ!
ガチに人を喜ばせるために作られた、マサラムービーだよ!
カールティの粗野な魅力、他の男たちの魅力が、ダンスやお飾り女性登場人物がいないおかげで、かえってブレずに際立っていて見やすくて痺れるわー。(時にとってつけたような)ロマンスやお色気シーンがなくても、マサラムービーは成立するということをKaithiは示してくれて天晴な気分になりました。
※ただし、監督はダンスを「もう古い」と思ってる訳ではないと思います。Kaithiの次の作品【Master】はバッチリ、ヴィジャイは踊ってましたしね!
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ビリヤニを主人公がケータリングのバケツから食べるシーン、あまりにも豪快すぎて見たことなかったですね。それも必見。
夜の騒動を描いた作品なので、暗さに強いデジタル撮影の良さを全面的に駆使した映画ではあるけれど、オシャレにレタッチしていない生々しくてザラザラした、アナログのような感覚もこのKaithiにはあります。
オシャレに西洋化したインド人は出てきません。ドーティ(腰布)を巻いた男ばかりがわらわらわらわら登場します。そこも魅力かな。
今年日本公開されたマラヤーラム映画【ジャッリカットゥ 牛の怒り】もその辺似てるかな。(←inaの観た感想はこちら)西洋化したインド人が出てこないという点で、【ムトゥ 踊るマハラジャ】もそうでした。【バーフバリ】も同様です。
カールティが40代なのに、若手と紹介されるのは些か疑問ではありますが。
コンスタントに主演作が続いているカールティですが、実はKaithiが初の興行成績100カロール(10億ルピー=約15億円)達成(最終的に、106カロール)の作品。
100カロール達成、っていうのはボリウッドだと頻繁に聞きますが、どローカルなタミル映画でそれを達成しているスターはほんの一握り。しかも、【Bigil】の上映とかぶって当初上映スクリーンが少なかったのに100カロールまで到達したのは、息が長く観客に支持されたということを物語っています。
【Bigil】も当然100カロール突破しています(295カロール)が、元々の予算の掛け方などが違うので、ビギルと囚人ディリでは興行収入だけで単純に比べるのはナンセンスです。(100カロールを売上げても、それだけでは赤字になる映画もあるので。)
囚人ディリはどのような大ヒットだったのかというと、低予算(25カロール)ながら高収益を上げた(予算の4倍以上の売上があり対費用効果の高い)映画、という面では2019年のタミル映画でピカ一だったのではと思います。(参考:Kollywood Box Office Collection 2019)
まあ、細かいことはいいんですよ。
【囚人ディリ】、めっちゃくちゃ面白いです!
踊ろうが踊るまいが、面白いものは面白いんです。
「踊るから」「踊らないから」とか理由をつけて行くのを迷ってないで、観てから今時のインド映画を議論しましょう。
日本語字幕ついて、【囚人ディリ】でカールティを観られる皆さん、きっとラッキーですから、劇場に観に行ってください!
今回ずいぶん、色々な地域で拡大公開予定のようです。
配給のスペースボックスさん、ご尽力ありがとうございます。
今週末からです!
【囚人ディリ】、観に行きましょう!!!