映画「ジャッリカットゥ牛の怒り」観てきました

暴走牛vs1000人の狂人!!

第93回アカデミー賞 国際映画祭インド代表作品

ジャッリカットゥ牛の怒り

ということでシアターイメージフォーラムにて観てきました。
2019年インドは、ケララ州のマラーヤラム映画です。
ちなみにジャッリカットゥという名称は、南インドのタミル・ナードゥ州で行われてきた、牛を群衆の中に放ち逃げようとする牛の背中の大きなコブに参加者が両手で捕まり続けることを競う牛追い競技のことをさしています。

だけども、それは間違いなく動物にとって残酷なため、2014年にインド最高裁判所によって禁止されました。
しかし、それは非常に重要な本物の伝統であり、農村社会の文化の不可分の一部であったため、何千人もの人々が禁止に抗議しました。 数年間の継続的な抗議の後、2017年にタミルナードゥ州知事はジャッリカットゥの継続を承認する命令を出しました。この決定は、動物の権利団体や多くの地元の活動家によって当然不承認となりました。
となっているようです。
ちなみに今年2021年のジャッリカットゥについては、COVID-19の陰性証明書を持っている人のみが参加可能であったようです。さすが伝統行事。
映画のほうに話をもどしましょう。
ともかく、暴走牛vs1000人の狂人!! ですからね、いったいどういう映画なのか、気になりますよね。見たくなること必至です!
牛(水牛ですね)が主人公!? なのかな、こういう動物を中心に描いた映画というと、巨匠ロベール・ブレッソンの映画で「バルタザール何処へ行く」という映画を思い浮かべます。この映画はロバが主人公で、このロバがさまざまな所有者に渡された後、ほとんどが彼を冷淡に扱っているという内容で、ある意味ロバの視点から見た映画となっているのが興味深いのですが、ジャッリカットゥの場合はそれが水牛になるのかなという妙な期待を持って鑑賞しました。
インド映画というと、上映時間の長さが気になるところですが、この映画は短めで2時間切っております。逆に牛追いで3時間近い上映時間だったらそれはそれですごいと思いますが。
あらすじなんかは公式サイトやトレーラーを見てもらえればわかりますので、簡単に言っておくと、肉屋の男アントニ(主人公か)が水牛を解体するときに水牛が逃げてしまい、畑や人家に被害が出てしまうので、捕まえるというお話ですが、そこにはいろいろな思惑があります。牛を捕まえて恋心をよせる女性の心をつかむとか、同じ女性をめぐって争い、密売の罪で村を追放された荒くれものとの確執であるとか、近隣の村のヒマな男たちも駆けつけたりと、それらが人間同士の醜い争いへと発展していくという。
おおよそ前半では、水牛に逃げられた肉屋のヴァルキとアントニ、ヴァルキの妹のソフィ、以前肉屋で働いていたタッタッチャンが中心で、村の住人たちのエピソードが語られます。村ですからね、ゴシップネタはすぐにひろまっちゃったりなんかして。おまけにそれぞれの人物が変人揃いというか、わりかしみどころ満載かも。
撮影手法もなかなかすごい。ババーンとストップモーションでカットが移り変わるところがなんだかスタイリッシュな感じを受けた。これが随所にでてきます。
それから、食肉として売っているので、それを買い求める人、調理風景などがとても多くでてきます。食べている風景なども美味そう。結婚式のときにだす食事の打ち合わせをしているときにも、当人たちは舌なめずりしている様子がとても良い。
肝心の牛を捕まえるほうはというと…これがですね、なにやってるんだかという感じです。一頭の牛を追いかけるのに、村総出に近い人たちが奇声を上げながら捜索していくわけだけど、いざ牛を前にするとすくんでしまって、わーっと逃げたり、また追いかけたりの繰り返し。一人だけ、牛を捕まえる目的で呼び戻された、村を追放された荒くれもののタッタッチャンという男が銃をもっているだけだけど、これが大して役にたっていない。そもそもこの男の本心は牛を捕まえるためにきたわけではないのだけど。
牛を確実に捕まえられるシーンが一カ所あったのだけど、ここで欲を出したために、逃げられてしまったりして、あとはもうしっちゃかめっちゃか。そもそも集団で追いかけてるのに、協力して捕まえようという気がないんじゃなかろうか。
終盤、陽が沈んでからの夜のシーンは必見。闇の中、たいまつや懐中電灯の光に浮かび上がる山の斜面を、水牛を追う男たちが木々を縫って疾駆する。このカメラワークはしびれました。
またこのころは、狂人の群れといった感じで、これは「ムトゥ踊るマハラジャ」で、アンバラ様を追いかけるところを思い出した。
最後はもう…カオス状態で、ポカーンと画面を凝視しておりました。
「バルタザール何処へ行く」のような…なんて思ってましたが、違ってましたね(笑)。いや、結構カルト的な雰囲気満載で、見応えありました!

このサイトをフォローする!